lamia

'drawing follow the feeling'

あとがき

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「アコースティック」とは「音響の」という意味の形容詞だが、楽器の世界では、電気を使用しない生(なま)楽器を指す。

 

中学時代、学校が終わると大急ぎで帰宅し、父親に買ってもらった"Gibson"の"レスポールJr.スペシャル"を手に取って、磨いては弾いて、また磨いて…という陰気で"ぼっち"で充実した日々を送っていた(笑)。

そんなある日、どこからか私がギターを弾くということを聞きつけたクラスメイトが学校でのライブイベントで"バンドをやらないか?"と声をかけてきた。

楽曲がボウイ"ということで、既に洋楽にしか興味がなかった私は一瞬ためらったが直ぐに思いなおし参加することに決めた、何しろ初めてバンドを組めるのだから…。

ボーカルの福住くんの家で見たくもない"ボウイ"のイメージビデオを何度も見せられる羽目にはなったが(笑)、音楽室でバンド練習を繰り返すうちに内向的な私にも沢山の友人が出来た。

そして中学3年の夏、体育館での初ライブ。

その瞬間の空気感と歓声はまだピュアだった頃の私の青春の1ページとして深く記憶に刻まれている(笑)。

f:id:lamialure:20240221204444j:image体育館ライブの衝動を忘れられずにいた私は高校一年生の夏、ヘルプギターとして初めてライブハウス(今はなき厚木FUZZY)でライブをすることになった、楽曲は"ニルヴァーナ"。

"Breed"から始まって、二曲目の"Smells like teen spirit"のイントロを弾くと自分がすっかりミュージシャンになったような錯覚に陥り、スポットライトを浴びながら悦に浸って"Stay Away "へと続いたところまでは覚えている、その夜は興奮と耳鳴りでなかなか眠れなかった。

それからオリジナル曲を作り、自分のバンドも組んであちこちライブハウスを回ったものだ。

パワーコードしか弾けない、下手くそで弱々しい私の歌声が大成することは一ミリもなかったが、そんな青春を過ごすことが出来たのは本当に幸せだったと思う。

f:id:lamialure:20240221204624j:image当時、新譜でリリースされた"ニルヴァーナ"のアンプラグドのライブ音源を聴いて衝撃を受けた。

シンプルで少なく、それでいて複雑で奇妙なコード進行、ラウドではないのに湧き出る、優しくも空虚な負のオーラ。

バンドを解散するかしないかという頃、親戚の叔父さんから借りていた"Gibson"の"ゴスペル"というアコースティックギターでスコアブックを見ながらカートを真似て、しゃがれ声でよく弾き語りをしたものだ。

結局、メンバーが進学や就職で次々と去って、いつの間にか一人取り残されてしまった…。

とうとう"ゴスペル"も叔父さんの元へと連れ戻され、ベッドの下に追いやられて激しく順反ってしまったチープな"モーリス"を引っ張り出して爪弾きながら、まともな仕事にも就かずに随分と長い間、現実逃避を続けていた。

それから20数年が経って、今や自分の家族が出来、何故だかルアーを作っている…本当に不思議なものだ(笑)。

f:id:lamialure:20240221204805j:image歳を重ねてまたギターを手にしたとき、先ず弾きたかったのは"ニルヴァーナ"だった。

親友にもらったストラトを塗装し直し、カートも付けていたシングルハムのPUに載せ替えた。

そして"ニルヴァーナ"のアンプラグドよろしく、"Martin"の"D-18"(実際にはビンテージのD-18E)を物色していたが中々しっくりくるものが見つからず、数年前に"ゴスペル"と同じダブルエックスブレイシングでスクウェアショルダーの、生まれ年の"J-45"を手に入れ、クローゼットの奥底にしまったままのスコアブックを引っ張り出してあの頃のように爪弾いたりしている。

そんなこの頃であるから、自分の作品に、ルアーらしさのカケラもないネーミングを付けてしまった訳だ(笑)。

特別なパーツもなく、至ってシンプルな二次元のペンシルベイト…生鳴りの素朴な音色を今作のプラグに重ね合わせてみた。

f:id:lamialure:20240221203906j:imageもうすぐそこまで来てる春先のペンシルベイトゲームに新作"acoustic/アコースティック"を選んでいただければ嬉しい。